はやぶさサンプル分析・国際AOとは何か?



はやぶさサンプル分析・国際AO実行委員会・委員長 藤本 正樹(ISAS、JAXA)

はやぶさサンプル・キュレータ 安部 正直(ISAS,JAXA)




世界の研究者へ、はやぶさサンプル分析研究の国際公募(国際AO)が出されました。

この国際AOの概要は以下の通りです。


●はやぶさとは?

「はやぶさ」は2003年に打ち上げたJAXA太陽系探査ミッションです。小惑星を探査した上で、そこからサンプルを持ち帰ることに挑戦しました。小惑星イトカワには2005年11月に接近しました。そこでは、二回にわたり着陸しサンプル取得が試みられました。サンプル収納装置を抱えたカプセルは、2010年6月に地球に帰還しました。
イトカワに着陸してサンプルを取得するはやぶさの想像図(提供:池下章裕) イトカワの全貌。イトカワは、ラバルパイルと呼ばれる、衝突・破壊した天体が再び集積して形成した小惑星である イトカワ表面のズーム・アップ。いかにも表面に砂粒がありそうに見える。

皆様ご存知の、はやぶさの帰還

●はやぶさサンプルの取り出し

はやぶさサンプルの収納装置からの取り出し、その簡易分析と保存、サンプルの研究者への貸出業務は、宇宙科学研究所のキュレーション設備で実施されます。キュレータは、その実務責任者です。

イトカワでのサンプル取得は、予定通りの形で実施することはできませんでしたが、結果的に、サンプル収納装置内にはイトカワ表面から持ち帰られた砂粒(10~100ミクロンという大きさの微粒子)が見つかりました。このイトカワのサンプルは、隕石と異なり、地球大気に晒されておらず、また、地球大気に突入する際の加熱も受けていないので、小惑星表面の宇宙環境に関する情報を雄弁に語る、貴重なサンプルだと言えます。

微粒子をサンプル収納装置から取り出すのは、たいへんに時間のかかる作業です。サンプルは、汚染のないように、また、失わないように、注意深く取り出された後、簡易分析にかけられます。

簡易分析を受けたもののうち、約60個のサンプルが事前に選抜された国内研究者のチームによる「初期分析」にかけられました。その結果の一部は2011年8月に「サイエンス」誌の特集号に報告されています。また、この成果は「サイエンス」誌によって2011年サイエンス・ニュースのトップ10の一つに選ばれました。

はやぶさサンプルは100ミクロンに満たない微粒子ですが、現在の分析技術をもってすれば、これらを分析して科学的成果を生みだすことは十分に可能なのです。このこと、つまり、事前に予定された手法によるのではなく、ぎりぎり持ち帰られた粒子がちょうど分析可能なサイズであったことこそ、「はやぶさの奇跡」ではないかと思います。また、このようなサンプルだったからこそ「微粒子分析からの惑星科学」という新しい地平線が切り拓かれつつあるということも、言及に値するでしょう。

サンプル収納装置にある砂粒の様子。これを取りだすのは、時間のかかる作業です

●はやぶさサンプル分析

はやぶさサンプル分析活動は5つのカテゴリーからなります:(1)初期分析、(2)NASAが主導する活動、(3)国際AO、(4)JAXAが主導する活動、(5)キュレーション設備での将来分析機会への留保。

上で述べたように、初期分析は、はやぶさサンプルの潜在的可能性の高さを証明しつつ完了しようとしています。また、2011年12月には、NASA分の第一回目の移送も終えました。つまり、「サイエンス」特集号や様々な学会で初期分析チームの成果発表を聞いて待ちわびている世界中の研究者へ、第一回目のサンプル提供をする機会である国際AOを発行する準備は整ったということです。

●第一回国際AOについて

研究者にはサンプル・カタログが公開されます。研究者はそれを見て、この粒子にこういう分析を実施すればこういうことがわかる、とアイディアを練ります。それを研究提案書にして国際AO実施委員会へと応募します。委員会では、外部の研究者の意見も聞きながら研究者の微粒子を扱う能力、提案された分析の実現可能性、科学的意義、サンプルが如何に効果的に分析されるか、といった様々な観点から評価を行います。一つのサンプルから得られる情報を最大化するため、提案者にはチームを組んで総合的な分析をすることが推奨されます。

サンプル・カタログには、サンプルの顕微鏡写真と鉱物組成を推定するためのスペクトル情報などが記載されています。研究者はこれらの情報に基づいてアイディアを練るのです。委員会では「はやぶさサンプルならでは」という提案がなされることを期待しています。

カタログに掲載されている、サンプルの写真とそのEDXスペクトル。これらの情報に基づいて、研究者は分析計画を練る。

●今後について

これまで、サンプルの取り出しは3つの方法で試みられました。第一回国際AOには、あるひとつの方法で取り出されてから簡易分析にかけられた約190個のサンプルのうち、シリケイト・タイプと分類されたものが公開されます(ここには、約50個の初期分析からの戻り分も含まれます)。

取り出されたが簡易分析が未実施なものだけでも1,000個以上、また収納装置から取り出されていない粒子数はそれ以上になると予想されます。時間のかかる作業ではありますが、貴重なサンプルが粗末に扱われてはなりません。一方で、はやぶさサンプルが忘れられてしまわないよう、また、その価値がタイムリーに活用されて研究分野の活性化に貢献するよう、戦略的にはやぶさサンプル・キュレーション活動を運用していくことが重要だと考えます。

第一回「はやぶさ」サンプル国際研究公募サイト(英語)